百合子、ダスヴィダーニャ

百合子、ダスヴィダーニャ

若き日の作家宮本(中条)百合子とロシア語翻訳者湯浅芳子を描いた映画です。百合子は、現在、宮本百合子の名で知られているように、のちに共産党書記長となる宮本顕治と結婚するのだが、この映画は、まだ最初の夫である言語学者の荒木茂と婚姻中、野上八重子の家で湯浅芳子と出会うところから始まります。
映画の中の芳子は凛として美しく、そして、観客はその後百合子に裏切られることを知っているだけに、その束の間の愛の日々が切ないです。
二人がひとときを過ごす福島の家で迎える祖母のやわらかな会津弁が「八重の桜」を思い出して懐かしいことです。しかも、その祖母役は「あまちゃん」にも出ていた”鈴木のばっぱ”、大方斐紗子。百合子の母が「芸術家を家族に持つということの覚悟」を百合子の夫の荒木に問うシーンがあるがこの母親役が吉行和子だからリアリティがあります。
また、荒木役の大杉漣もすごくうまかったです。百合子より15歳年上という設定にしては、年の差が大きすぎると思ったけれど。 芳子・百合子を演じる二人の若い女優の演技が硬いので、吉行和子や大杉漣といったベテランのうまさに支えられているところもあります。
ロケ地は静岡県。これだけ大正時代の面影を残す建物が残っているというのもすばらしいです。